プロモーションとプロデュースは「ニワトリと卵」の関係

永田:今の話をちょっと広げると「なんでも相談室」でいろいろな方とお会いしてね、「プロモーションで困っているんです」というご相談がすごく多いんです。
プロモーションってね――、多くの方が固定観念に近いイメージを持っていらっしゃるのはまず売るものがあって、それを知らしめるためにプロモーションをするっていう構図じゃないかと思うんです。でも、僕が思うにじつはそれだけじゃなくてね。そこは「ニワトリと卵」なんです。つまり、必ずどっちが先という話ではない。活動や企画って、そのどこに価値があって、どうやったら広まっていくかって考えるわけですよね。それって本当は対になっている。それが今のご質問の答えにつながっていくと思うんです。
常に先にカタチがあってそれをどうしていくかじゃなくて、(先に)お客さんとコミュニケーションするためにどうしようかっていうプランがあって、そこに活動方針や作品などのカタチがついてくることもある。そこは最初から影響し合っていっしょになって上がっていくと思うんです。
そういう意味でいえば、あるバンドが「次のアルバムどうしよう?」っていうときに、「アルバムつくっちゃいました、宣伝しましょう」ではなく、バンドが今ここまできている、「次にどういうお客さんに広がる可能性があるか」って考えて、「じゃあ、カヴァー集つくりましょうか」ってなることもある。その場合のプロモーションの目的は、ただカヴァー集を売るのではなく、次のステップに行くために必要なお客さんとつながっていくことになるんですよね。これは非常に重要なポイントで。頭が切り替わるというか、そういうイメージができると変わってくると思うんですね。

これ、よく出す例で聞き飽きていたらごめんなさい、お蕎麦屋の話です。
僕が趣味でお蕎麦を打てるようになって「家族や友達が褒めてくれるからお店でも出そうか」と頭に乗ったときにね、もう一歩進んでお店を考えてみると、立ち食い蕎麦屋をやるのか、かつ丼くらいいっしょにつくれる様になってランチタイム800円くらいでセット出すような蕎麦屋にするのか、おいしい日本酒と魚を揃えて、〆のせいろがうまい店。ひとり5000円です。みたいな蕎麦屋を出すのか。まあざっくりありますよね。どれを選ぶかで、店の名前も決まってくれば、場所、メニューも決まりますよね。お客さんの単価も決まるから予算組もできますよね。そういうのをどこから考えて行くかじゃないかと思うんですね。

モノがあってそれを外に出す「結果」としてのプロモーションっていうよりは、活動の仕方を考えるときに、どうやったらお客さんと接点ができていくか、その都度その都度で自分たちに何が必要で、それを獲得するために今どんなプランが必要なのか、そこがつねにいっしょになっている。だからよくプロデュースとプロモーションは背中合わせという言い方もされる。そういうイメージを持って、「具体的なこととしてこういうことがある」というふうに考えていただくと、ずいぶん広がるんじゃないかと思います。「なんでも相談室」へお見えの方にはそういう方向でお話するんです。そうすると、腑に落ちて下さる方が多いんです。「プロモーションの問題ではなく、活動そのものの方向性の考え方ですよ」というような言い方をします。