サービスひとつひとつを値付けするとアーティストの選択肢が増えるという話

永田:そのへんも時代と環境が変わっているところですけど。芸能プロダクションが業界をつくってきた流れでね、新人発掘して食えないときも給与を払って食わせながら、宣伝から何から全部しながら、その代わり生んだお金はまず受け取るということをやってきた。だからどういうサービスをして、それにいくらお金がかかっていたかというのはすごくわかりにくいんですね。それはレコード会社になっても変わらないところがあって宣伝部は考えられるプロモーションを全部するわけですけど、それに一個一個値札はつけられない。
アメリカだと、インディーズのアーティストが出たときに、「販路だけできるだけ安く確保したい、プロモーションはまた別のところで」というように一個一個選択していくんですね。オールインワンだと安心しちゃうんだけど、結局その中身をみんながわからないままにきちゃうところがあって。
そういう意味で、CAMPFIRE[キャンプファイヤー]はとにかく安い。集金してお金を還元すること、サイトの運営はやっていますから使って下さい、その代わり拡散はやって下さいと。で、自分たちでやるバンドはまた金野さんみたいなところに頼むとかね。それはそれで、あるわかりやすさですよね。手厚く見えるようなことがいっぱいついて手数料率が上がっちゃうと、それはどうなのかな、とかね。そこから、いろいろ判断材料が増える。

例えば、今はTuneCoreみたいなサービスを使えば、誰でもダウンロードサイトやSpotifyに音源を入れたりはあっという間にできる。アメリカのTuneCoreは販路だけ確保して音源をちゃんと流しますから格安でやりますというのがウリでした。ですけど、日本にそれが入ってくると、あなたのところはプロモーションは何ができるんですか?って話しになって、格安でやっている彼らとしては〝僕らにそれ言われてもなぁ……〟ってことになる。一般的に日本ではそういう状況があります。それが今の話に表われているかなと。本当はいろいろなところでできると、もっと選択肢が増えるんじゃないかなと思っています。

B:私、何にも知らないんですけど、Makuake[マクアケ]って、検討されました?

金野:していないですね。手数料が若干高かった印象があるのと、サイバーエージェントもストリーミングでは音楽業界に絡んでいて、エイベックスさんとつながりがあるとか、あるんですけど、じゃあ、音楽業界のインディーズアーティストの現場に足を突っ込んでいる会社かといったらそうは見えないので。その辺わからないので「ない」という判断ですね。