Q&A(2人) ボランティアとの向き合い方を教えて下さい

永田:平田さんのイベントのお話は僕も似たような経験をしています。都内のある文化財団主催のイベントをお手伝いしたことがあるのですけど、彼らが出入りの業者さんに見積もりの依頼を出すと、業者さんから出てくるものが100万とかっていう話になるんですね。
その額になっちゃうと、財団としてはイベントそのものができない。だけど僕みたいな者が見に行って、「これくらいだったらPAにお金掛ける必要はないし、極端に言えばなくたって生音で平気ですから」と言って、半額くらいでもやればできる。で、1回やってみると、多少無理して現場はバタバタだとしても、文学館の人も、地元の人も喜ぶし、音楽家も喜んで帰ってくれるんですね。
そうやって1個1個ちゃんと流れをつくってゆく。それは現場もそうですし、プロモーションとしてお会いできないリスナーとつなげてゆく仕事もそう。しばらくそれをやってゆくと新しい流れができるんじゃないかなと。
そういうところで僕らMCAもやっています。無理やり〆るとそんな感じなんですけど(笑)。えーとおふたりにご質問ありますか?

A:お聞きしたいんですが、いろいろな方に手伝っていただくと思うんですね。そのとき、ボランティアの方もいると思うんですけど、ボランティアについて、どう思っていますか?
「ボランティア=無償」というのがあると思うんですけど、彼らの責任感というか。僕は何度か突然連絡とれなくなっちゃったことがあるんですね。その人に任せていたところもあったのに。どうせお金をもらっていないし、と考えていたのかもしれないですけど――。ボランティアをうまく仕切るというか、その辺について、永田さんも含めてどうお考えかなと。

平田:僕のところのスタッフは5人で全員ボランティアです。辞める人はいなくて、今年に入ってさらに3人増やす予定です。専門学校のときにウチのスタッフになった子たちが多くて、ウチが始まったばかりの頃のライブイベントを手伝うので、そこですごくわかりやすく楽しいと思うんですよね。やりがいを感じてくれている。
あとは、地方だからかもしれないですけど、普段から相談役のお兄さん的な立場で接しているので、モチベーションが落ち始めていると気づいたら、一所懸命ケアしたり。(でも)それくらいですね。
ご飯代、足代くらいは出すよ、というのはありますけど、ギャランティがどうのこうのと言いだすと、仕事もそれなりのものを求めるようになっちゃいますしね。
ただ、お金をもらっていないというところから、「風邪引いちゃったから明日行けません」とか、そういうのはままあります。そういうところは自分も課題です。

その人の音楽に携わりたいという思いが、ミーハーな気持ちなのかマジな手伝いのか。でも、だいたい最初はミーハーですよね。

A:そうなんですよね。

平田:そのときに、こっちの情熱を思い切りぶつける。あるいは「だったらいらない」とはっきり言う。わかりやすくする。子供に何かを教えるのといっしょだと思うんです。わかってないから良いとも悪いとも思っていない。その判断基準をこちらがちゃんと与えてあげる。それでもやりたい、というのだったらこっちも応援するよと。ウチと関わることによってこの業界で就職できるくらいになったらいいねくらいの思いで彼らと接しています。
一方で、やっぱりお手伝いという感覚の子もいる。でもその子が辞めないでつづけていることがバランスになっているところがあって、全員がガチでも困るんです(笑)。全員に仕事を振れないじゃないですか。モチベーションがバラついているからバランスがとれるっていうのはウチはあると思います。

A:今まで消息不明になったことはないということですね。

平田:今のところいないです。

A:すごいなあ。細かいコミュニケーションということですね。

平田:最初の「子供にサッカーを教える」という話に近いです。気付きを与える。教えるんじゃなくて気付かせる。けっこう待つようにしていますね。言うならそこがちょっとハマったのかな。言いたいけど――「ちょっと大変だったね」と言いつつこっちは原因がわかっている。敢えて待つというか。待つはアーティストに対しても意識的にやります。待って、待って、「今」というときにバーッて言うと、若い子だと純粋なのでその瞬間に入ってゆく。あとは地方なんで、そんなにカツカツしていない。楽しんでつづけやすいというところがあると思います。

A:ありがとうございます。

金野:僕の場合、ボランティアっていう考え方はなくて、基本的に払っているんですね。大学生の女の子が編集をやってくれているんですが、彼女に対して小額ではあるんですが払っています。これは自分への戒め的なところがあります。月末に振り込むという行為を自分に課すことによって自分を戒めるみたいな。
いっしょに働く人のモチベーションという趣旨のお話だったので、そこについてお話しすると、成長感を感じてもらえるようにすごい気を遣っています。チーム内でつねに情報を交換したり、議論を交わしているんですが、このメンバーはこの事象に興味があるというのはおぼろげながら把握しているので、そういうトピックを投下したり、GMAと関わることによって成長できる、メリットあるとふだんから感じてもらえるような場づくりは普段から意識してやっています。

あとは仕事を依頼する際に、自分がケツを拭ける範囲内でできるだけ裁量を持ってもらう。機械的にお願いすることは避けて「こことここに注意していただければあとは好きにやって下さい」というお願いのほうがやる気が出ると思うので。成長を感じてもらえるようにすることと、裁量を与えるの2点ですかね。

平田:裁量はそうかもしれないですね。やっていくうちにノッてくるという面はあるかもしれないですね。

A:小額でも払うという意味合いは、途中で投げ出さない、責任感を持ってほしいというものに通じるところもあるんですか?

金野:それは、もちろんです。

A:わかりました。

永田:ご質問の意図に関してだと、僕はそのあたりの経験はかなり不足しているんです。だから『NPOの教科書』を見ますっていう話ですけど(笑)。自分の経験不足と勉強不足を人のせいにするとね(笑)、寄付がないのといっしょで日本ってそもそもボランティアの文化がないじゃないですか。だけどボランティアに支えられないとできないことっていっぱいある。そういう背景を踏まえて、僕がやる仕事にどう落とし込むかというと、そこは明らかにあまり経験していないし、じつは逃げているところで。
初めてそれを突き付けられたのは2年前の「YEBISU MUSIC WEEKEND」。100人単位のボランティアの方々とどうやっていくかと。でも実行委員会のひとりは京都でボランティアベースで15年くらい、お客さん2000人規模の音楽フェスをやってきているので、ある経験とノウハウがある。だから恵比寿の仕事に関していえばその辺は全部彼に委ねていた。さらに実行委員会全員がかなり追い込まれた状況だったので、僕は皆さんと接している時間がなかった、というのが正直なところです。

これもまた責任逃れしたうえでちょっと偉そうなことを言ってしまうと、そこで金野さんみたいな人がボランティアで来くれていて、そこで金野さんも何か感じて、その後ちゃんとGMAができているわけですよね。質問とはぜんぜん関係ないけどね(笑)。

金野:いやいや、実際にそうです。

永田:そのときの金野さんに僕が時給1000円でも払わなきゃいけなかったら、やっぱりいっしょにはできていなかったというか。そういう意味で、僕の言葉としてではなく文化論として、ボランティアってそういうことじゃないかなと思うんです。あとは目先のリスクヘッジするのであれば誰に何を任せるか、裁量とか、お二方が言って下さったことになってくると思います。これまでの流れと違うところで音楽をどんどん草の根で広げて行こうというときに、僕自身もそこはすごく学んでいかなきゃいけないところだなと思っています。

他に何かありますか? とくになければ、全体ではボチボチ1回〆ます。お二方はまだいらっしゃいますので個人的に捕まえて、どんどん話を聞いて下さい。ここはそういう場だと思っています。今までの2時間はイントロですから。

一同:(笑)。

永田:ここから先をどう活かすかは皆さん次第なので。えーと、じゃあそういうことで、みんなの談話室の10回目でしたけど、今日は金野和磨さん、平田英治さんをお迎えしました。どうもありがとうございました。

一同:(拍手)。

 

16.03.29. 渋谷カナエルにて

会場協力: 株式会社SpinApp Japan